一般社団法人 家庭動物共生教育支援フォーラム(FAES)

2018.12.11 七尾旅人 犬たちのためのコンサート 取材レポート

2018年12月11日、「犬たちのためのコンサート」を体験してきました!

七尾旅人というアーティストをご存じでしょうか?
全てを包み込むような、何とも不思議な優しさの声、ことば。そして時おり、人々の意表を突くアイデアと行動で音楽好きの人々を魅了しています。
この度、デビュー20周年を記念した新作アルバム「StrayDogs」の発売前夜に、なんと犬をお客さんにした「犬たちのためのコンサート」を開催するということで、代表大野と理事大久保(&愛犬ぺろ)で、取材をさせていただきました。



会場は2018年いっぱいで閉鎖となる六本木SuperDeluxというクラブ。歴史を感じる建物の地下フロアです。
階段しかないので、小雨のパラつく天気の中カートでお越しになる参加者のために、スタッフの方々が一緒にカートを降ろすのを手伝ったり、わんちゃんと飼い主さんのために至れり尽くせりの優しさで迎えてくれました。

絶妙な灯り加減のフロアには、前方をわんちゃん優先席として広く取り、後ろの方に人間用の椅子が配置されています。
パラパラと集まり始めたわんちゃんと飼い主さん。なんと100組を超える応募の中から、抽選で20数組の来場とのこと。







予定時間を少し過ぎて、一緒にステージに登場した「オレがオレが」タイプの七尾氏の自由な愛犬にほっこりしながら、名曲「わたしの赤ちゃん」を「わたしのワンちゃん」にアレンジしてスタート。
スタート前に複数の飼い主さんにお話を伺うと、こういったわんちゃんイベントへの参加自体が初めて、という方がとても多かったのですが、いざ始まると会場はびっくりするほど静か。
わんちゃんの耳に配慮して、使う楽器はギターとコントラバス、少しの打ち込み音楽のみ。





時おり入る七尾氏の愛犬の「ワン!ワン!」の声に、七尾氏は何度か「ウチの犬が一番バカだわ。参加規約守れてないのウチの犬だけじゃないの?心配になってきた」と苦笑まじりにコメントしていましたが、今回のコンサートへのわんちゃん同伴に関する規約は、以下の通り。
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[ 愛犬同伴規約 ]
① リードやマナーグッズをご持参いただき、施設備品の損傷、汚損、他の来場者、会場外近隣住宅等への迷惑とならないようにお気を付けください。
② 会場内でもしも、マーキングや排泄をしてしまった場合、飼い主様に後始末をお願いしますが、 終演後にスタッフが改めて念入りに清掃しますので、後始末の際に、場所をお報せください。
③ ご参加いただける愛犬は、狂犬病および伝染病の予防接種を受けている犬に限ります。
  生理中(ヒート)のワンちゃん、また、攻撃的な気質のワンちゃんのご参加も、申し訳ないですが、ご遠慮ください。

会場にスタッフはおりますが、犬の専門家ではございません。愛犬の体調などは飼い主様での管理をお願いいたします。
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そして実は、(今はもうありませんが)このコンサートの応募フォームの末尾にはなんと「一緒に楽しい時間を作りましょう。ワンちゃんによろしくお伝えください」という一文も記載されていました!さすが犬たちのためのコンサートです。素敵!

「犬チーム」と呼ばれるの5名のスタッフがステージの上手と下手に配備され参加の方々を見守ります。
トイレシーツ、消臭スプレー、タオルなどの準備もバッチリです。



参加前から参加当日まで、いたるところで溢れ出るわんちゃん愛を感じることができました。
コンサート中盤以降では歌にあわせて吠えるわんちゃん、おしっこしちゃうわんちゃん、飼い主さんの膝でまったりまどろむわんちゃんなど、各々本当に自由に過ごしていました。

犬の寿命(だいたい15歳)と人間の15歳を対比しての歌や、盛り上がりの定番曲をわんちゃんの耳のために配慮した「ちっさい(音量の)Rollin'Rollin'」、B'zとじゃがたらの江戸アケミに触発されたという「愛のためにわがままに僕は犬だけを傷つけない」とう幻の未音源化曲(思った以上にじゃがたら)、この日のために二日前に完成したばかりという出来立てほやほやの想いのこもった新曲などを披露し、約2時間のコンサートは終了。

「犬の負担を考えて音も小さく時間もコンパクトにしたけど、まだ帰りたくない。この日のためにやってきたといっても過言じゃないくらい。今後はこれを中心にやっていきたい。犬のために歌うと思うと自分の中から濁りの無い歌が出てきたような気がする。自己満足になってないといいけど」と笑顔で名残惜しそうにステージを後にした七尾氏。
貴重な時間を体験させていただき、ありがとうございました。
ゆったりリラックスして聴いている飼い主さんのわんちゃんはゆったりと、ウキウキとしながら聴いている飼い主さんのわんちゃんはテンション高くいたように見えました。
わんちゃんと飼い主さんの感情のリンクは、ここでも感じることができました。





「犬のための」と銘打ったホール仕様のコンサートは、ルー・リード(NY、2010)以来だそうで、これが日本で開催できたことに大きな意味があるのではないかと思います。
日本にはまだ、こうしてわんちゃんを連れて参加できる場所自体がとても少ないことや、あってもルールが厳しいことも多く、大変に貴重な機会でした。規模としてもちょうど良かったのではないでしょうか。
もしまた開催の機会があれば、ぜひ回を重ねて日常の風景になってくれるといいですね。

そこで、「犬たちのためのコンサート」今後のためのご提案を3つ!
1.開始前に犬のストレスサインをみんなで確認し、あいだに休憩時間をはさむ
基本的にはとても自由な空間でしたが、飼い主さんはその場で聞いていたい思いがあるためなかなか動きにくく、わんちゃんはお水を飲んだりちょっと気分転換したりがしにくかったかも知れないので、積極的に休憩時間を作ってあげる
2.吠えても良いが、吠えさせる必要はない
わんちゃん自身が黙って静かに聞いていることを選択したのであれば、それを尊重する。一緒に歌う場合は、 マイクや楽器を使わずに、生の声でワンワン言ったり遠吠えしてみたら楽しそう
3.すべてのわんちゃんは天才!
わんちゃんの飼い主さんが自分の愛犬に向けてよく言う、愛情込めた表現であることは100も承知で、 それでも世界から「ウチのバカ犬」という表現がなくなっていくと、きっともっとみんなが嬉しいし、犬という動物じたいへの誤解も減って、好きになれる人も増える

もし、次回この3つが組み込まれたコンサートが開催できたら、まさに世界一のコンサートになるのではと思います。
とはいえ、今回あれだけの数のいろいろな出自のわんちゃん(保護っ子が多かったです)が室内に揃って、わんちゃん達のトラブルが一切なかったことが、なによりもまず評価されてほしいと思います。
この企画をした七尾氏の想い、スタッフの方々の気遣い、飼い主さんの意識の高さなどもありますが、参加したみんなが「犬たちと一緒に七尾氏の歌と空間を楽しみたい」と強く願った結果だと思います。



飼い主さんが楽しいと、わんちゃんも楽しい!
犬を連れて一緒に楽しみに行ける場所が、これからもっと増えてくれますように。

犬と音楽を愛する私から、このレポートを読んでくださっているすべての犬と音楽を愛するあなたへ。
愛をこめて。

2019.1.16  代表理事 大野葉子